近年、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズではアニメーション名作映画の実写映画が続いています。
2014年の『マレフィセント』以降年に1本、2019年は『ダンボ』『アラジン』『ライオンキング』『マレフィセント2』と実に4本も公開されています。
たくさんの実写映画の中にはヒットしたものもあれば、大コケしたものなどさまざま・・・。
アニメーションが完成されていればいるほど、実写化は厳しいものがあると思います。
そんな実写映画の中で、大人が見ても面白いと個人的に思った作品を紹介したいと思います
目次
シンデレラ
幸せな少女時代を送っていたエラは突如両親を亡くし、新たな母とその娘と共に暮らす事に。
彼女たちはエラに辛くあたり召使のように扱っていた。ある日、城で王子の妃選びの為に盛大な舞踏会が開かれる事になり…。
実写化された作品の中で、一番好きな作品です。
あまりに有名なお話のため、この作品が公開された当時「こんなよく知られたお話、誰が見に行くの」と失礼ながら思っていました(汗
が、実際に見てみるとこんなに有名なお話なのに引き込まれ、考えさせられる場面もありました。
単なるシンデレラストーリーではない
最近の世の中の風潮では「シンデレラストーリー」は嫌悪される傾向があるようです。
「何もしないで、ただ王子様を待っている」という受け身な態勢と、「一目ぼれ→見た目重視」というお妃選びが原因だと思われます。
『シンデレラ』や『白雪姫』『眠れる森の美女』が特にその特徴があり、だからこそ『ラプンツェル』や『アナと雪の女王』といった、強くて自立していて自分の夢をかちとるプリンセスが人気があるようです。
しかし、この実写のシンデレラはただ受け身でいるわけではありません。
継母と義姉たちにいじめられても、実母から教えられた信念を信じて生活し、愛した人にはありのままの自分を受け入れてくれることを望みます。
そして最後にひどいことをし続けた継母に「あなたを許します」と告げます。
これは一見優しい言葉のようでいて、継母のプライドを粉砕する挑戦的な言葉でした。
このシンデレラは優しく、そして強かったのです。
王子もまた葛藤を抱えている
王子もまた、アニメーションに出てくるぼんやりしたお坊ちゃまではありません。
彼の国は小さく、他の強い国とうまくやっていくためには政略結婚で国力を高めなければならないという、政治的なプレッシャーを感じています。
それでも彼は森で出会ったエラに好意を持ち、王を説得し、ワガママではなく強い決意をもってエラを探します。
しかもアニメーションのように家来まかせではなく、自分もこっそり参加して探すのです。
この王子となら「末永く幸せに暮らしました」というお決まりの文句も、実際の努力の結果であろうと思えます。
映像美と脇役の魅力
『シンデレラ』の見どころである、フェアリー・ゴッドマザーが魔法を使うシーンと舞踏会のシーンは、期待にたがわず大変夢のある美しい映像になっています。
特にシンデレラのブルーのドレスはすばらしい!髪型がダウンスタイルなのも、新鮮で初々しくて美しい。
フェアリーゴッドマザーは、落ち着きがなく慌ただしく、アニメーション版と全く違うところが面白い。
フェアリーゴッドマザー約のヘレナ・ボナム=カーターは『アリス・イン・ワンダーランド』の「赤の女王」が有名ですが、出番は少なくとも非常に強烈な印象を残します。
また継母トレメイン夫人役のケイト・ブランシェットも冷たく美しい。その娘二人の衣装にも注目です。
そしていい味を出している大佐、ノンソー・アノジー。ナイジェリア生まれの親をもつイングランドの俳優です。
最近のディズニー実写映画ではプリンセスの国籍をめぐっていろいろと議論になっているようですが、この大佐も最初に登場した時はちょっと違和感がありました。
それはたぶん、今まで絵本で見たり映画で見たおとぎ話の世界が白人ばかりだったからだと思います。
舞踏会のシーンでも招待客の中には、様々な国籍の人がみてとれます。(中にはちょっと勘違いな日本女性もどきも見受けられるので、探してみて下さい)
しかしこの大佐がとてもいい味をだしていて、重要な役割を占めています。
こういった脇役が要所要所を締め、飽きさせないストーリーになっています。
一方でアニメーションでかなりの割合を占めていた動物たちは実にあっさりとした登場となっており、カボチャの馬車を引く御者以外は擬人化されていません。
そのあたりもリアリティがあってよかったのだと思います。
プーと大人になった僕
親友のくまのプーや仲間たちと別れてから長い年月が経ち、大人になったクリストファー・ロビンは、日々の仕事に追われ、会社から託された難題と一緒に時間を過ごせない家族との問題に悩んでいた。
そんなクリストファーの前に突然現れたプー。久々の再会に、喜びと懐かしい日々を感じながらも、また仕事に戻らなければならないクリストファーに、「仕事って、ぼくの赤い風船より大事なの?」とプーは問いかける。
彼が忘れてしまった本当に「大切なモノ」を届けるために、プーと仲間たちは“100エーカーの森”を飛び出し、彼が家族と住むロンドンへと向うのだが…。
「大切なモノ」は大人になっても変わらない
プーは難しいことがあまりわからないようだけど、空気が読めないわけではありません。
そしてすごく率直に簡単なことを言うのですが、それがすごく深く感じられます。
「どこかへ行きたいとき たまにじっと待っていると どこかの方から来てくれる」
「ぼくの風船を見せたら幸せになるかな」
「その鞄って何が入っているの?」
「それって赤い風船より大事なの?」
クリストファーロビンが「大切だ」と言えば、プーは信じます。その仕事用の鞄は、クリストファーロビンにとって、自分にとっての赤い風船と同じくらい大切なのだと。
そしてそれを一生懸命届けようとする姿を見て、クリストファーロビンは「鞄なんかより大切なモノ」を思い出すのです。
見る前は寂しくなるお話ではないかと心配しましたが、最後に心暖かくてほのぼのする作品でした。
ちょっと強引なハッピーエンドもディズニーならでは(苦笑
前半の、クリストファーと家族のいさかいは身につまされる人も多いのでは。
忙しい時は世間も狭くなりがち。今自分が後生大事に抱えている「大切な(だと思っている)モノ」を立ち止まってよくよく見てみる必要があるかもしれません。
疲れている時にこの作品を見ると、プーの名言に励まされるでしょう。
アリス・イン・ワンダーランド
19歳に成長したアリスは、パーティを抜け出し、白うさぎを追いかけて大きな穴に落ちてしまう。
行き着いた先は<ワンダーランド>。
そこでアリスは、マッドハッター、白の女王、赤の女王など、摩訶不思議な住人たちと出会う。
マッドハッターは、アリスこそがワンダーランドの独裁者 赤の女王による支配を終わらせることのできる“救世主”だと信じていた。
いつの間にかワンダーランドの運命を背負ってしまったアリスは、赤の女王との戦いに巻き込まれていく―。
アニメーション「ふしぎの国のアリス」の数年後を描いています。
19歳になったアリスは、大人になりきれず、さまざまな葛藤を抱えています。
アリスは大人になりたくなかったのか
ストーリー冒頭は、19歳になったアリスが母と姉の画策で自分だけ知らなかった婚約パーティーに行くことになってしまいます。
そこで好きでもない(どちらかと言えば嫌い)貴族の御曹司ヘイミッシュから求婚され、外堀を埋められた形にもかかわらず「YES」と言えないアリスはその場を逃げ出し、そして白うさぎを追いかけてワンダーランドへ迷い込みます。
この冒頭のアリスは、「ふしぎの国のアリス」の頃よりは大人になったものの「自分の嫌なことはしたくない」という頑固なところがみられます。
ストッキングをはきたくない、嫌いな人とは話したくない、そして一見幸せそうな姉の夫の不義を目撃し、いっそう結婚に疑問をもちます。
一般の人たちが成長し、流され、慣れてしまうことに常に疑問を抱いているように思います。
それを理解してくれていたのが、亡くなった父親だったのでしょう。
「私にはできないわ」と言っていたアリスが、自分なりの成長をとげていくお話です。
珍しく?続編も面白い
続編『アリスインワンダーランド 時間の旅』も、同じぐらいオススメです。
「みょうちきりん」だと思っていたワンダーランドの住人たちも、実は私達と同じように家族があり普通の生活をしています。
そして幼少期のつらい思い出をひきずったりしています。赤の女王でさえも。
時間とは何か、家族とは何か。
それぞれの、家族の間のわだかまりを解いていくアリス。
そして最後に、居心地のいい世界に別れを告げ、現実世界でも自分らしく生きて行きます。
アリスと母親との関係も前作より深いものとなり、後味の非常によい作品となっています。
マレフィセント
オーロラ姫へ呪いをかけたマレフィセントに隠された禁断の秘密が今、明かされる…
誰もが知るディズニーの名作『眠れる森の美女』のもうひとつの物語
『シンデレラ』『白雪姫』と並んで有名なディズニープリンセス映画『眠れる森の美女』
オーロラ姫に呪いをかけるマレフィセントは、ディズニー映画のなかでも最強ヴィランズと言われています。
しかし、この映画はそのマレフィセントを新たな角度から描いています。
興収65億円突破!したメガヒット作品です。
本当にオーロラを愛していたのは誰
マレフィセントがオーロラ姫になぜ呪いをかけたのか。
マレフィセントは単なる悪役ではなく、悲しみ苦しみ憎み、そしてオーロラ姫を深く愛します。
「こんなことされたら呪いのひとつやふたつ、かけたくなるよね」と思ってしまいます。
また、オーロラを育てる三人の妖精のうるさいこといい加減なこと。
かなり早い段階で、観る側はマレフィセントの気持ちに同調していくと思います。
マレフィセントの叫びは、一度かけてしまった呪いを解くことができないマレフィセントの苦悩をひしひしと感じます。
王子の愛に頼らない最近の傾向
『シンデレラ』の評でもふれたように、最近では受け身的なプリンセス像が嫌われる傾向にあるようです。
『マレフィセント』でもオーロラはフィリップ王子と出会いますが、王子のキスではオーロラは目を覚まさず妖精たちに偽物扱いされる始末。
『アナと雪の女王』でもそうでしたが「真実の愛」は恋愛に限らないことを描いています。
この作品のオーロラはシンデレラやアナよりはキャラクターが弱いですが、それでも自分の意志で行動しています。
いくら一緒に暮らしたことがないとはいえ、オーロラが自分の父親に冷たいこと。
まぁ父親の方も1日前に城へ戻ったオーロラを叱り飛ばして閉じ込めるぐらいですから、愛情は薄そうです。
この父親が本当に深くオーロラを愛したのならば、それは「真実の愛」であり物語の結末はまた違ったものになっていたかもしれません。
イントゥ・ザ・ウッズ
シンデレラ、ラプンツェル、赤ずきん…誰もが知っているおとぎ話の主人公たち。それぞれが出逢い、“願い”をかなえ、すべてがハッピーエンドを迎えたかと思った次の瞬間、運命は彼らに思いもよらない難題をつきつける…。
おとぎ話を卒業した大人たちに贈る、めでたし、めでたし…の“その後”を描いた、ちょっぴりほろ苦い“アフター・ハッピーエンド”ミュージカル。
この作品こそ、まさしく大人向けです。
まず、吹替版ばありません。
そして歌がなんとも恐ろしいです。
出演者たちがそれぞれの事情で「森へ!」と歌いますが、そのテンポとメロディの暗さに不吉な予感がします。
「その後」だけでなく「その前」もみどころ
おとぎ話の「その後」を描いたお話、とありますが「その前」も大人向けの闇な場面が多々あります。
おとぎ話の主人公たち(赤ずきん、シンデレラ、ラプンツェル、ジャックと豆の木のジャック)が登場しますが、主役はパン屋の夫婦です。
その夫婦は仲が良かったが、何年も子宝に恵まれませんでした。その原因は夫の父親が魔女の畑から大事な豆を盗んだせいでした。
その豆を失ったことで美しさと若さを失った魔女は、その男の家系は子供ができないという呪いをかけ、まだ赤ん坊だった娘(パン屋の妹)も奪って自分の子供としてとうに閉じ込めて育てていました。(←ラプンツェル)
呪いを解くには『ミルクのように白い牛』『赤い頭巾』『トウモロコシのように黄色い髪の毛』『金色の靴』の4つを、3日後のご前0時までに集めてくることでした。
父の残した6粒の豆を手に、夫婦は森へ。
おばあさんに会いに、赤ずきんは森へ。
舞踏会へ行くために、シンデレラは森へ。
牛を売りに行くために、ジャックは森へ。
この辺りの早口の歌が、メロディとともに非常に不安な気持ちを駆り立てます。
そして森で会った彼らはいろいろありますが、最終的にパン屋は目的のものを手に入れ、ほかの面々も物語にあるように自分の夢を叶えます。
呪いをかけた魔女でさえ、若さと美しさを取り戻します。
しかし、物語はそこで「めでたしめでたし」とは終わりませんでした・・・。
人間の欲、自分勝手、大人の都合など子供にはまだ聞かせられない、おとぎ話のほろ苦い現実が描かれています。
まとめ
非常に個人的な選出でしたが、いかがだったでしょうか。
現在(2021年6月30日)は『101匹わんちゃん』の実写というかスピンオフの『クルエラ』が上映中です。
非常に評判がいいようですが、もともとクルエラという人物に興味がないので二の足を踏んでいます(汗
今後も『リトルマーメイド』『ティンカーベル』『ピーターパン』といったキャストが決定しているものも含め、実写化予定の作品は20作品を超えています。
なぜストーリーを知っている映画を観るのか?と問えば、やはりその世界をアニメーションでなく実際の映像で観たいからでしょう。
実写映画はその映像美と、誰もが知っている往年の名作をいかに飽きさせず見させるかというのがポイントになると思います。
大人が見て感嘆できる実写映画がたくさん制作されることを願います。