ディズニー映画『ミラベルと魔法だらけの家』を視聴しました。
前半のあらすじは「ネタバレなし」、後半は「ネタバレあり」の2パターンで紹介しています。
また映画の舞台コロンビア共和国についても紹介していきたいと思います。
目次
あらすじ(ネタバレなし)
『ズートピア』『モアナと伝説の海』のディズニーが贈るミュージカル・ファンタジー。
魔法の力に包まれた、不思議な家に暮らすマドリガル家。家族全員が家から“魔法のギフト(才能)”を与えられるなか、ミラベルだけ何の魔法も使えなかった・・・。
ある日、彼女は家に大きな“亀裂”があることに気づく──それは世界から魔法の力が失われていく前兆。家族を救うため、魔法のギフトを持たないミラベルが、“唯一の希望”として立ち上がる。
なぜ彼女だけ魔法が使えないのか?そして魔法だらけの家に隠された驚くべき秘密とは!?
(公式HPより)
山々に囲まれた町エンカント。魔法の力に包まれたカシータ(家)に住むマドリガル家は、それぞれ”魔法のギフト(才能)”を与えられていた。
おばあちゃんであるアルマは夫ペドロと三人の子と共に迫害から逃げる途中でペドロを失い、「奇跡」を授かった。
「奇跡」は安心できる住処を与え、子供たちが大きくなると一人ひとつ”魔法の才能(ギフト)”を与え、その力で協力して家族を守り、エンカントの人々の役に立ってきた。
3人の子供たちのうち2人(フリエッタとぺパ)は普通の人間と結婚し、フリエッタには3人(イラベラ、ルイーサ、ミラベル)ぺパには3人(ドロレス、カミロ、アントニオ)の子供が生まれる。
5歳以上の子供たちはみんなギフトを与えられていたが、ミラベルだけ何も与えられなかった。
ミラベルは何とかみんなの役に立ちたいと頑張るが、魔法の力がなければ何も成し遂げられず、アルマに「自分のできること、一歩下がることをしなさい」と言われてしまう。
そんな中、5歳になったアントニオがギフトを受け取る儀式の日が来る。
アルマをはじめとするマドリガル家はミラベルの時を思い出し不安を覚えるが、アントニオは動物と話せる「才能(ギフト)」を無事に受け取る。
人々が祝賀ムードに浮かれる中、ミラベルはカシータにひびが入り「奇跡のローソク」の炎が消えそうになるところを目撃する。
魔法の力が弱まってきているのだった。
姉ルイーサはそれに気付いていた。人々の役に立とうとパワーの魔法を使い続けているが、だんだんパワーが弱まってきていることを自覚していた。
ミラベルは自分が奇跡を守るのだ、と意気込み、ルイーサに教えられてブルーノの部屋へ向かう。
フリエッタとぺパの兄弟ブルーノは、不吉な予言をすることでまわりに疎まれ、家を出ていた。
そのブルーノが予言した「ヴィジョン」を見れば、魔法の力が弱まっている理由がわかるとミラベルは思ったのだ。
ブルーノの部屋で割れた「ヴィジョン」を見つけたミラベルは、その破片をつなぎあわせると、そこに写っていたのはミラベルと、亀裂がはいった破滅寸前のカシータだった・・・。
“個人的な”感想
正直、見る前までは題名とテーマに拒否反応がありました。
邦題によくある『〇〇と××』(しかも××の方が説明的で長い)と、「魔法」というディズニーで既に散々使い古された手垢つきまくりのテーマ。
全く興味なかったのですが、「Disney+」で無料で見られることを知り、暇な時にちょっと見てみようか・・・という感じでいsた。
が。
とても面白かったです!
主人公が魅力的
以前見た『ソウルフルワールド』は主人公に感情移入できず、いったん挫折・・・。
ミラベルは優等生でも特別美人でもなく、でも前向きで普通の人が思い入れしやすい。しかもコンプレックスを持っているところが、誰もが共感できると思います。
ミラベルが5歳で目の前の扉が消えていく場面は、本当に暗い悲しい気持ちになりました。
そんなミラベルに対して慰めるわけでなく、距離をおくアルマってサイテーだなと思いました。
物語の舞台が狭さがよい
このお話は住んでいる地域「エンカント」を出ることがないばかりでなく、家「カシータ」の中でお話が展開されます。
スケールが小さいといえばそれまでですが、その「カシータ」は魔法の家だけあって家の中とは思えないスケールを持っています。
そして無駄に遠くへ旅する展開がないので、登場人物それぞれの考えを歌を使って描けたと思います。
(またしても別の映画と比較して恐縮ですが、『2分の1の魔法』は無駄に遠く遠くまで旅した挙句にたどり着いたのはあそこか・・・という展開だったので)
狭い世界とはいえ、家の中の不思議な空間というのは子供は大好きだと思います。
スタジオジブリの『借りぐらしのアリエッティ』もそうですし、絵本『おしいれのぼうけん』や『ナルニア国物語』は別世界への扉がそこに広がっています。
自分の身近な場所が、実は素晴らしい世界につながっているかもと想像するのはとても楽しいですよね。
動物がかわいい!
ディズニー映画の主人公には動物の相棒がつきものですが、ミラベルにはいません。
ですがかわいがっている従妹のアントニオが動物好きということで、たくさんの動物が出てきます。
特にカビパラがかわいい!
そしてエンカントにはロバが多いようで、ロバも頻繁にでてきていい味を出しています。
後味スッキリ!
ちょっと都合のいい?感じもありますが、全体を通して納得いくラストとなっています。
登場人物も、いわゆる「悪役」がいません。
映画前半では少しムカつく登場人物が出てきますが、それぞれに抱えた問題があり、最後まで尾を引くことがありません。
あらすじ(ネタバレあり)
ミラベルがギフトを受け取れなかった日、未来を案じたアルマに頼まれてブルーノはヴィジョンを見た。
そしてそのヴィジョンがみんなに悪く取られるのを恐れ、ミラベルのためにヴィジョンを破壊して姿を消した。
しかしブルーノは家の中の部屋の裏側にネズミ達と住み、カシータの亀裂を直していた。
ブルーノは家族が好きで近くにいたかったのだ。
ミラベルはブルーノに頼んで、ヴィジョンのその先を見てみた。
そこには”イサベラとハグし奇跡の炎が輝く”ヴィジョンが。
ミラベルは着飾ってすましたイサベラとウマがあわなかった。しかしイサベラと話してみると、家族の期待に応えて完璧になるよう頑張っていただけで、本当はありのままに生きたいという本音があった。
イサベラと心が通じ合いハグしあったミラベルだったが、アルマはミラベルの話をよく聞かずすべてをミラベルのせいにした。
ミラベルは絶望し「奇跡が消えかけているのはおばあちゃんのせい」と怒る。
その瞬間大きな亀裂が入り、カシータが壊れ始める。ミラベルは奇跡のローソクを取りに行くが、カシータの倒壊後に奇跡の炎は消えてしまう。
ミラベルはあまりのショックに姿を消すが、そこへアルマがやって来る。
アルマは「あたえられた奇跡を失いたくないと思うあまり、私たちの奇跡を誰のためにあるか見失ってしまった」とミラベルに謝る。
ミラベルは「何かが壊れたって大丈夫 力をあわせればなおせるから」とアルマに言う。
ミラベルは家族のもとへ戻り、自分たちの力で家を建て始める。
そこへ町の人たちもやって来て、みんなで力をあわせて家を作り上げる。
最後にミラベルがドアノブをはめた時、家は魔法をとりもどしカシータが帰ってきたのだった。
“個人的な”解釈
全体的なお話はよかったのですが、最後がちょっとふわーっとしていたなぁと思いました。
ミラベルはなぜギフトをもらえなかったのか、はっきりとした明言はなかったです。
そのため、もう一度最初から見直して考えました。
ミラベルはなぜギフトをもらえなかったのか
家を守ろうとするあまり、おばあちゃんは大事なものを見失いはじめた。
人々を助けるため この奇跡を使いましょう
移り行くこの世界 でも真心が奇跡の炎を
次の世代へ繋げて行くのです
(♪ふしぎなマドリガル家♪より)
こういうことって「魔法」に限らず、よくあることですよね。
大事なものを見失うと、ほころびができ、段々と崩壊していく。
それを気付かせるために、ペデロはミラベルを授けた。
ミラベル自身がギフトだった、ということなのでしょう。
カシータが崩壊しそうな時、他のマドリガルは魔法を使ってなんとかしようとして失敗する中、魔法をもたないミラベルは自分の力で奇跡のローソクまでたどり着きました。
魔法の力がなくても、ミラベルは自分の力で未来を切り開いていくことができるのです。
ラストはあれでよかったの?
最後に魔法をとりもどしたところは(予想はしていましたが)ちょっとご都合主義だなぁ~と思いました。
「壊れたら建て直せばいい」と自分たちの手で家を建て始める。
そこへ村人たちが助けに来ました。「奇跡はもっていないけど力になる」と歌います。
アルマは「みんなの役に立たなければ」と言っていたけれど、困った時は助け合えばいいのです。
そんな「魔法がなくてもみんなで力をあわせればいい」という流れになっていたので、マドリガル家は魔法がないまま地域に溶け込んで暮らしていくというラストでもよかったのでは?と思ったり。。。
それでもお話の後味がいいのは、家族それぞれの立ち位置がはっきりしたからだと思います。
ルイーサとイサベラは、無理をしなくてよくなった。
ブルーノは家へ帰ることができた。
そしてミラベルとおばあちゃんは、心を通じ合うことができた。
このおばあちゃんには、かなりムカムカさせられました。
冒頭で「ギフトは、あなたと同じで特別なものよ」と言ったくせに、ギフトをもらえなかったミラベルに対して豹変。
お父さんお母さんがミラベルのよき理解者なのが救いでしたね。
ミラベルが、おばあちゃんにはっきりと「奇跡が消えかけているのはおばあちゃんのせい」と言った時はスカッとしました。
でもその後で「おばあちゃんがいてくれたから奇跡をさずかった。おばあちゃんがいたから家族になれた。」と言いましたね。
ミラベルは思ったことを冷静に相手に伝えられる、正しくて強いヒロインだったと思います。
別れても戻ればいい
その道をすすめ
奇跡は訪れる
切り開くんだ自分の未来を
ミュージカル映画というわりに、『リメンバーミー』ほど「1回聞いて覚えた!」という曲はなかったのですが、何度も聞くとじわじわ来るところが、この映画の音楽の良さだと思います。
今ではサントラをリピートです。
鑑賞する前のアドバイス
あまり前情報を見ずに鑑賞する方がいいとは思いますが、マドリガル家の家族関係と「ギフト」の種類は知っておいた方が、見ている時混乱しないと思います。
冒頭でミラベルが「ふしぎなマドリガル家」という歌で説明してくれるのですが、早いし短いのでちょっとついていけないと思います。
私は1度見てから、もう一度見直してやっといろいろわかりました。(映画館で見ていたら理解できなかったかも)
「あらすじ」は知らなくても十分楽しめますが、登場人物は知っておいた方がより楽しめると思います。
映画の舞台コロンビア
映画の舞台はコロンビア。
コロンビア共和国は南アメリカ北西部に位置する共和制国家です。
東にベネズエラ、南東にブラジル、南にペルー、南西にエクアドル、北西にパナマと国境を接しており、北はカリブ海、西は太平洋に面しています。
正直、名前はとてもよく聞くのに、あまり精通していない国でした(汗
言語
コロンビアの言語は「スペイン語」なのですね!全く知りませんでした。
スペイン植民地時代があるからのようです。
ブラジルはポルトガル語、ペルーはスペイン語、エクアドルもスペイン語です。
エンカント(Encanto)はスペイン語で「魅力」「魅惑」「魔力」
カシータ(Casita)はスペイン語で「小さな家」(家を表すcasa +指小辞ita)
確かにアパートとかで「カーサ××」ってありますね。指小辞というのは
主に名詞や形容詞につき、感情的に「小さい」「少し」といった意味を表す接辞
だそうです。わかりにくいですが、同じように指小辞がついたセニョリータは未婚女性を意味します。既婚女性がセニョーラなので、それより”小さい(若い)”という意味なのかな?と推測します。
「小さくてかわいい、居心地の良い愛しい家」ともとれる反面、「小さい」という蔑称が入る場合もあるので自分の家に対してはいいですが、人の家には言わない方がいいらしい。
ちなみに「マドリガル」も聞いたことある単語だったため調べてみたので一応。
マドリガル(madrigal)〖詩〗 14世紀イタリアで生まれ,16-17世紀にヨーロッパで流行した叙情的・牧歌的な短詩.
〖音楽〗 16世紀を中心にイタリア・スペイン・イギリスで作られたポリフォニーによる叙情的な声楽曲.
関係あるような、ないような・・・。
食文化
コロンビアといえばコーヒー。映画の中にもコーヒーがよく出てきます。
しかしそれ以外にも、気になる食事が。
特に気になったのは、日本の”おやき”のような、アレ。
arepa(アレパ)
すり潰したトウモロコシから作る伝統的な薄焼きパン。
チーズや肉、アボカドなどを添えたり、分割してサンドウィッチにするなど様々な食べ方があるそうです。
ミラベルの母フリエッタが「食べ物で癒す魔法」が使えるので、このアレパはケガや虫さされを直す手段に使われます。
(でも魔法がなくても、母親が作った料理なら癒されますよねー)
イサベラへの求婚相手を招いた夕食で出されていたのは、こちらだと思われます。
ajiaco(アヒアコ)
鶏肉とジャガイモを使ったシチューに近い料理。
映画の中に出てきたように、アボカドや生クリームやライスなどを添えて食べるそうです。
優しい味で日本人にも食べやすい味なのだそうです。日本のレシピサイトにも作り方が載っています。
日本でブームを巻き起こしたタピオカの原料キャッサバ(Yuca ユカ芋)も南米で広く食されており、揚げてポテトフライ感覚で食べたり、パンに使われたりさまざまです。
実はキャッサバには有毒な成分「シアン化合物」が含まれているのだそうです。そのため毒抜き処理が必要で、生の状態で日本に輸入することは禁止されているのです。
毒抜き処理しタピオカとして生成された後、あのタピオカドリンクとして私たちの手元へ届けられると知ると、若者のブームだと敬遠していたものが大事な文化に思えます。
ファッション
ミラベルの着ている洋服、とてもカラフルでかわいいですよね。
この洋服はTraje típico de Vélez(トラヘ・ティピコ・デ・ベレス)といわれ、サンタンデール県のベレスという街の伝統的な民族衣装だそうです。
ミラベルの持っているショルダーバックはMochila(モチーラ)といわれるワユー民族の伝統工芸品で、全て手編みで作られるそうです。
はいていた靴は、ちょっとわかりにくい。爪先とかかと部分だけがあるように見えますが、ポスターを見ると足首で縛るレースアップのようです。
スペインのエスパドリーユが一番近いようにと思いますが、底部分が違うような・・・(エスパドリーユはロープをコイル状に巻いた靴底を、アッパー部分に縦のステッチで縫い付けたシューズを指す言葉だそうです)
衣装と同じアンデス地方の民族衣装をさがしてみたのですが、足元は地味なゴムサンダルのようなものが多く、はっきりとはわかりませんでした。
男性たちが着ていた洋服にも特徴があり、日本でもなじみのあるPoncho(ポンチョ)やSombrero(ソンブレロ)など男性ファッションにも注目です。
バラやカーネーション
実はコロンビアは切り花の出荷量が世界2位なのだそうです。
映画の中でミラベルの姉イサベラが美しい花を咲かせるギフトを授けられたのも、そのお国柄のようですね。
「色とりどりのバラを咲かせて 着飾って」とイサベラが歌っていたように、特に有名なのがバラとカーネーション。
母の日にカーネーションを送る習慣がある日本にも、多く輸出されているようです。
切り花が有名な理由は、コロンビアにははっきりとした四季がないため、一年中安定した気候であるということや、日中の気温の変化が大きいということが挙げられるようです。
歴史
アルマの昔話では、三人の子供を授かった頃に故郷を離れなければならず、多くの人と逃げたと言っています。
コロンビアにそんな歴史があったのかと興味をもち、調べてみたところコロンビアの歴史は暗いものも多くありました。
コロンビアでは、20世紀の半ばから50年以上にわたって内戦が続き、たくさんの人が命を奪われ、故郷を追われることになりました。
その前の時代も、決して平安な時代とは言い難いものでした。
『ミラベルと魔法だらけの家』の時代がいつ頃かはわかりませんが、そのように故郷を追われる歴史があったことがうかがえます。
コロンビアにはDía de las Velitas(ろうそくの日)という伝統文化があります。
コロンビアの祝日である「無原罪の御宿り」は12月8日ですが、クリスマスと同じでその前夜が「ろうそくの日」となるらしいです。
どこの家も、ありったけのローソクに火をつけて並べ、大人たちは音楽を大音量で聞きながら飲めや歌えや、子供たちは花火や爆竹をしたりなどして、深夜まで大騒ぎするそうです。
マドリガル家の「奇跡の炎」を灯すローソクも、ここから来ているのかもしれません。
まとめ
映画を見ることで知らない国の文化や歴史について興味をもち、調べて知っていくことはとても楽しいですね。
カラフルなファッションやインテリア、そしてメインのラテン音楽もとても楽しめる映画です。
そして好きなシーンがたくさんあります!
私はブルーノのお皿のシーン、豹があーんしてるシーン、ルイーサの歌のシーン。。。見るたびに増えていきます!
ぜひ恋人、夫婦、友達、親子など誰かと一緒にみて、好きなシーンについて大いに語ってほしいと思います。